※本記事のアイキャッチは、DALL-E 3にて生成された画像です。
AI生成画像とは、人工知能技術を活用して自動的に生成される画像のことを指します。AI生成画像技術とは簡単にいうと、AI(人工知能)が大量の画像データを学習することで、画像の特徴やパターンを認識し、新しい画像を生成するモデルを作り上げるという技術です。
AI生成画像の仕組みは、主にディープラーニング(深層学習)などを基盤とした生成モデルに依存しています。代表的なモデルに、VAE(変分オートエンコーダ)やGAN(敵対的生成ネットワーク)があり、入力されたテキスト(プロンプト)や画像を解析し、学習したデータの特徴を組み合わせて、新しい画像を生成するといったものになります。
AI生成された画像を安全に利用するには、クリーンデータの使用や出力物の慎重なチェック、利用規約の確認など適切な対策を行う必要があり、著作権侵害やプライバシー侵害、情報漏洩といった法的リスクに備えることが重要です。
AI生成画像の著作権に関する法的解釈は、まだ確立されていない
AIが完全に自律的に生成した画像は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」ではないと考えられており、多くの国では著作権の対象外です。
ただし、人間がAIを創作の「道具」として使い、「創作意図」と「創作的寄与」が認められる場合、その作品は著作物とみなされる場合があり、AI利用者が著作者となります。
「創作意図」とは、思想や感情を特定の形で、具体的な結果物として表現しようとする意図のことを指します。
「創作的寄与」とは、人がAIを使用して著作物を創作する過程において、その人が著作物の創作に貢献したと認められる行為のことを指します。
たとえば、「日本の女子高生の画像を生成して」といった単純なプロンプトにて生成された画像の場合、著作物とみなされる可能性は低いでしょう。しかし、詳細な指示(プロンプト)や複雑な編集、選択、創作的な加筆・修正を加えた部分には、創作的寄与が認められ、著作物として認められる可能性があるのです。
創作的寄与の判断は、個別の事例に応じて行われ、AIを使用する一連の過程を、総合的に評価する必要があります。
AI生成物における著作権まわりは、AIの自律性と人間の関与度によって判断されることから複雑です。ケースバイケースで判断されることになります。
また、日本国内においては、AI生成画像に関する直接的な判例、裁判例がほとんど存在しないゆえ、AI生成画像における著作権の法的解釈が確立されていないというのが現状です。
自社商品の商品・サービスの広告など商用目的で、AI生成画像を使用する場合、特に慎重なチェックが必要です。最新の法律や判例、ガイドラインなどの情報収集、世界のAI生成市場の動向にも注意を払い、必要性に応じて、専門家に相談するといった対策も求められるでしょう。
AI生成画像による問題事例
AI生成画像による著作権侵害の問題として、生成・利用段階において、AI生成物が既存の著作物と類似し、かつ、既存の著作物に依拠して作成されたと認められる場合に、著作権侵害となる可能性があります。これはAIモデルが学習データの特徴を詳細に記憶してしまうことで起こり得る問題です。
実際に、AIが生成した画像が実在の人物に酷似し、誹謗中傷や詐欺に利用されたり、AIが学習データに含まれる個人情報を意図せず出力し、特定の個人を識別可能な形で表現してしまうといったプライバシー侵害の事例も数多く報告されています。
また、pixivやXなどのプラットフォームで、AIが生成した画像を自作と偽って発表する事例も増加しています。しかもタチが悪いことに、問題が発覚してもアカウントを乗り換えて活動を継続するといったケースが見られます。
AI生成画像による著作権侵害の問題は、AIの利用段階に発生するため、AIの開発段階で著作物の複製などを行った者が責任を負うことはありません。
ただし、AIの開発段階で著作権侵害が生じた場合、著作権者はAIの開発者に損害賠償請求や差止請求を行うことができます。
AI生成物による著作権侵害の懸念から、AI開発企業やプラットフォーム運営者は、利用規約の厳格化やAI生成コンテンツの明示義務化といった対策を強化し、AI画像生成におけるプライバシー侵害のリスク軽減と安全な利用の促進化を図っています。
しかし、AI生成物の著作権に関する法的解釈が不十分なことから、法的規制や倫理的ガイドラインの整備が追いついていないというのが現状です。
AI生成画像が著作権侵害してないか、判断する際に考慮すべき要素
ビジネスや副業で使用しているAI生成物が、既存の著作物の著作権を侵害していないか判断する際には、主に「類似性」と「依拠性」の二つの要素を考慮する必要があります。
「類似性」とは、AI生成物が既存の著作物と「創作的表現」において共通点を持っているかどうかを指します。
ここでのポイントは、単なるアイデアや作風、画風の類似性ではなく、具体的な表現の類似性を評価することです。
アイデアや一般的な概念の類似性だけでは、著作権侵害とはみなされませんが、創作的表現の共通点が認められる場合、類似性があると判断される可能性があります。
一方、「依拠性」とは、AI生成物の作成者が既存の著作物の表現内容を認識していたかどうかを示す概念です。
たとえば、AIの学習用データに特定の著作物群が集中的に使用されていた場合、既存の著作物に類似する確率が高まり、依拠性が認められる可能性があります。
逆に、AIの技術的仕組みにより、学習用データの著作物の表現内容が生成物に直接反映されないような対処がなされていれば、生成された画像が結果的に既存の著作物に類似していても、偶然の一致とみなされ、「依拠性はない」と判断されることもあります。
権利処理が適切に行われた「クリーンデータ」を使用する
ここまで、「クリーンデータ」という用語が何回か出てきましたが、簡単に言うと、「権利処理が適切に行われたデータ」のことを指します。
要は、AI学習用データに、著作権侵害のリスクが低いデータ(著作権フリーのデータ、権利者の許諾を得ているデータ、著作権の保護期間が満了しているデータなど)を使用しているということです。
クリーンデータを使用する利点には、以下のようなものがあります。
一方で、クリーンデータの収集や作成には、コストや時間、労力がかかる側面があります。また、クリーンデータに限定することにより、学習用データの多様性が失われる可能性があることから、バランスを重視し、データの多様性を担保する必要があります。
クリーンデータを使用することで、法的リスクや倫理的な問題を回避できるようになるだけでなく、AIの出力結果の信頼性向上にも繋がります。
そのため、長期的視点で見れば、AI生成画像の安全かつ効果的な活用における重要なステップとなると考えられます。
ただし、クリーンデータで学習されたAIモデルを使用すれば、出力物が既存の著作物に酷似する可能性がなくなるわけではないため、とくに商用利用時では、慎重なチェックが必要になることはで変わりません。
AI画像生成ツールを選ぶうえで大切なこと
AI画像生成ツール業界は群雄割拠で、Midjourney、DALL-E 3、Stable Diffusion、Adobe Fireflyなどの優れたツールやプラットフォームが続々と登場しています。
どのツールも、テキストプロンプトから高品質な画像を生成する能力を持ち、それぞれに特徴や特性があります。
しかし、生成ツールを用いて、何らかのキャラクターやロゴ、アイコンなどを出力した際、そこに「類似性があるかどうか」を判断するのは、非常に難しいことです。
プロのデザイナーやイラストレーターなどであれば、「あ、これはたぶんヤバい」と感覚的に察知できることもあるでしょうが、当人が知らなかっただけで、著名な作品と瓜二つの生成物が出力され、商用利用されてしまっているケースが起きているのは周知のとおりです。
そのため、AI画像生成ツールを選ぶ際には、下記のような仕様、配慮があるかにフォーカスすることが、法的リスクを避けるうえで大切になってくるでしょう。
・著作権で保護された特定の作品名や商標名を含むプロンプトを拒否する
・著名人や有名キャラクターの名前をプロンプトに含めた場合に、画像生成を拒否する
・ポルノグラフィーや暴力的な内容など、不適切なコンテンツの生成を防ぐフィルター機能がある
・ディープフェイク技術の利用に関する制限やガイドラインが設けられている
・生成された画像に著作権表示や透かしを自動的に付与する設定がある
ちなみに、ChatGPT(DALL-E 3)において、「リラックマみたいなキャラクターの画像を生成して」といったプロンプトを出すと、
リラックマに似たキャラクターを生成する際には、著作権の問題を避けるために、オリジナルのキャラクターに似すぎないようにする必要があります。
具体的には、色や形、表情などを変更し、独自の特徴を持たせることが重要です。異なる色や特徴を指定していただけると、よりオリジナルなキャラクターを作成できます。
といった具合に、著作権など第三者の権利を侵害する可能性があるプロンプトには、応じないようになっていました。
しかし、別の画像生成AIツール(名称は伏せます)では、同じプロンプトでリラックマ(と酷似したキャラクターなど)がまんま出てきてしまいました。
「権利侵害のおそれのあるプロンプトには応じない」といった点を強調している画像生成AIツールは多いですが、権利侵害の懸念を払拭できているとは言い難いものが大半です。
その点で言えば、Adobe Fireflyが1歩抜け出している印象があります。というのは、Adobe Fireflyでは、Adobe Stockとパブリックドメインになった著作権フリーの画像のみ学習することで、知的財産権の問題をあらかじめクリアしているからです。ビジネスシーンにおいて、安心して商用利用できることが保障されているのは、魅力的です。
AI画像生成ツールを選定する際は、生成画像の品質や料金設定、利用ユーザー数、カスタマイズ性などに目が行きがちですが、著作権侵害のリスク対策やプライバシー保護機能、不適切コンテンツの生成防止などの法的・倫理的配慮があるか注視し、生成AIを利用する段階(生成・利用段階)と、AIの開発・学習段階を区別して考えることが重要ですね。
さいごに
どのツールにも一長一短があり、どれなら安全かは一概に言えるものではありません。
ただし、AI生成物をビジネスや副業で利活用する際には、ライセンス契約(利用規約)を遵守し、著作権侵害の理解を深めておくことが、さまざまな法的リスクを避けるうえで、前提になる考え方であることは間違いありません。
また、AI画像生成ツールの多くは、生成された画像の商用利用を許可していますが、中には条件が付されているものも当然あります。
複数のツールを使用していると、認識が曖昧になり、誤った扱い方から事故につながる可能性も高まることから、各ツールの「利用目的と範囲」「利用期間」「独占/非独占の別」「二次利用の可否」「クレジット表記の要否」あたりは、特に目を通しておき、気になった時にすぐ確認できるようまとめておくことも大切でしょう。
AI技術の目覚ましい発展にともない、AI生成物の法的リスクに関する法的解釈は、今後の裁判例や法改正によって、より明確化、厳罰化されていくと予想されます。
本記事が、ビジネスや副業でAI生成画像の活用を考えているあなたの一助になればうれしいです。
ご精読ありがとうございました!
▼こちらの記事も何気に読まれています!
①:モデルの精度向上
クリーンで質の高いデータを使うことで、AIモデルの予測精度や性能がアップします。ノイズやエラーの少ないデータで学習することで、モデルはより正確なパターンを学べます。
②:バイアスの軽減
適切に整理されたクリーンデータを使うことで、データに含まれる偏りやバイアスを減らせます。これによって、より公平で信頼性の高いモデルが作れます。
③:学習効率の向上
クリーンデータを使うと、モデルの学習プロセスが効率的になります。不要なノイズや外れ値を処理する必要がなくなり、学習時間を短縮できます。
④:解釈可能性の向上
クリーンで一貫性のあるデータを使うことで、モデルの挙動や予測結果がより解釈しやすくなります。これは、AIの説明可能性や透明性を高めるのに役立ちます。
⑤:法的リスクの軽減
著作権やプライバシーの問題がクリアされたデータを使うことで、法的リスクを最小限に抑えられます。
⑥:長期的な保守性の向上
クリーンデータで学習したモデルは、長期的に安定し、保守が容易になります。データの品質が高いため、モデルの再学習や更新もスムーズに行えます。
⑦:コスト削減
最初からクリーンなデータを使うことで、後からデータクリーニングや修正を行う必要がなくなり、長期的にコストを削減できます。
⑧:説明責任の向上
モデルが生成した画像について、クリーンなデータで学習したことを対外的に説明できます。
⑨:品質の向上
他人の著作物を無断で使用することなく、倫理的に選別されたデータを使用することで、生成される画像の品質向上が期待できます。