たとえば以下のような感じ。
【例】
・なぜ、あなたのLINEはいつも「既読スルー」されるのか?
・なぜ、さおだけ屋は潰れないのか?
・なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?
・なぜ、部下はあなたの言う通りに動かないのか?
「なぜ〜か?」と問いかけられると、因果関係(結果と原因)をシンプルに示すことができ、相手の注意・関心を引きつけられます。
また、問いかけることにより、相手の思考・行動に何らかの影響を及ぼす「プライミング効果」が発動します。
プライミング効果とは、先に与えられた情報に無意識に影響を受ける心理現象のこと。アンケート調査などで使われる心理効果の一つです。
たとえば以下の問いかけは、商品の購入には直接結びつかなさそうですが、先んじて与えられた情報(質問)がプライマー(先行刺激)となり、相手の問題意識を呼び起こす効果が期待できます。
Q:「今後半年以内に、新車を買う予定はありますか?」
→ 購入率が上がる
Q:「週末の都知事選挙の投票へ行きますか?」
→ 投票率が上がる
Q:「健康のために意識していることはありますか?」
→ 健康食品を購入する、ダイエットや運動を始める、ジムの無料体験に参加する など
プライマーを与えることで、相手のその後の思考や行動に、一定の影響を及ぼす効果が期待できるのです。
このように、「なぜ〜か?」は非常に使い勝手のいい切り口ですが、「相手の返答が弁明や回避になりやすい」点に注意が必要です。
一例を挙げますね。以下のような上司と部下の掛け合いを想像してみてください。

なぜ、今日中に契約延長のサインをもらえなかったの?

決済者がサインの日付を書き間違えてしまいまして……

なぜ、プレゼンの開始時間が10分遅れたの?

プロジェクターの動作不良に直前に気づいて、別のを借りに行ってました……

なぜ、クライアントとの打ち合わせに遅れたの?

乗り合わせた電車が人身事故で止まってしまい、ルートを変更したんです……
立場関係もありますが、「なぜ〜?」で問いかける上司の言葉には、どことなく「おとがめ」のニュアンスが感じられるものです。
上司に「おとがめ」の気持ちがなかったとしても、部下の立場かすれば「自分はいま責められている」といった思考に向きやすく、言い分もどこか弁明っぽくなってしまうのです。
「なぜ〜?」で問いかけると“人”が対象になり、“過去”に焦点が当たります。
そのため、物事の原因や理由を明らかにする場合は有効でも、相手の問題解決を促すコーチングとしては不向きな聞き方ともいえます。
そこで使えるのが、「なぜ」→「何」に置き換えるというテクニックです。こうすると“問題”が対象になり、焦点が“未来”にあたります。
さきほどの例でいえば、以下のように変わります。

今日中に契約書にサインしてもらうためには、何をすればよかった?

書き間違えを想定して、コピーを持っていくべきでした。
(こうした事態を想定するリスク管理が足りてなかった。次からは必ず予備を持っていこう!)

時間通りにプレゼンを開始するには、何が必要だったと思う?

事前確認です。前日のうちに、プロジェクターに動作不良がないかチェックしておくべきでした。
(プロジェクターが故障がちだったのは知ってたけど、誰かが修理しといてくれるだろうと放置してた。人任せにしないで自分から行動すべきだった!)

打合せに遅れないためには、何に気をつけていればよかったと思う?

途中でルート変更しても間に合うよう、時間に余裕を持って出発すべきでした。
(ギリギリに出発するのは自分の悪いクセだ。早めに行動する意識を持たないといけないな。)
対象と焦点が変わったことで、「責められている」→「受け入れられている」のニュアンスに変わり、返答や思考が前に向きやすくなります。
このように相手に問題解決を促したり、「内なる声」を引き出したりするのが目的であれば、「何?」で問いかけるのが有効だったりします。

✔ 「なぜ」は“人”が対象になり、“過去”に焦点があたる。
✔「何」は“問題”が対象になり、“未来”に焦点があたる。
✔ 使い分けとして、なぜは「物事の原因や理由を特定したい」とき。何は「相手に問題解決を促す」ときや「内なる声を引き出したい」ときなど。
使いやすいからいって安易に「なぜ〜?」で問いかけると、相手を追い詰めてしまう場合もあります。
ニュアンスの違いでもっとスムーズに印象良く伝えられるシーンって多いはず。「なぜ」と「何」のどっちで問いかけたら効果的か、意識して使い分けられるといいかもです。

ご精読ありがとうございました。「問いかけ力」に磨きをかけたいあなたの一助になればうれしいです。
▼ こちらの記事もよく読まれています
「なぜ?」は、記事のタイトルや見出しの切り口でよく使われるパターンです。
人は質問されると、「それは○○だから」といった答えを回収したくなるため、続きが読まれやすくなる誘導の効果が期待できます。