教師:「はい、ここテストに出るよー」


・・・!!!
このフレーズが出た途端、それまでぼんやりと授業を聞いていた生徒たちが、一斉に注目し始めます。
なぜか? その問題がテストに出るとわかったからですよね。
脳は、「これから重要なことをお知らせします」のニュアンスで切り出されると注意センサーが働き、見る・聞く体勢を整えようとします。
テストの例のように、これから起こることをあらかじめ伝え、先の見通しがわかるように表現する手法を、フューチャーペーシング(Future Pacing)といいます。
フューチャーペーシングは、主に新しい行動パターンを身につけるためや、特定の目標を達成するための準備として使われます。
読み手は、この先に起こると考えられる出来事をあらかじめ想像してみることにより、未来のあるシナリオや状況を想像し、その中で自分がどのように行動するか、どのような感情を持つかを事前にシミュレーションすることができます。
未来の成功体験を精神的に経験することで、それを現実のものとするための自信やモチベーションを高めることにつながります。いわば、自分の中で「成功のリハーサル」をすることができるのです。

フューチャーペーシングは本来、NLP(神経言語プログラミング)で使われる用語ですが、本記事では、記事のイメージアップ(印象をよくする)のための手法 として解説しています。
フューチャーペーシングをライティングに活用すると、以下のような効果が期待できます。
✔ 記事のイメージアップ
✔ 直帰率の防止、記事の読了率、ページ平均滞在時間の向上
✔ CTA・CVRの向上(ページリンクへの遷移、商品購入など読み手にとらせたい具体的なアクションをうながす)
記事の内容に限った話でもありませんが、誰でも「見通しが悪い」と不安を覚えるものです。
記事でいう見通しの悪さとは、「この記事を読むと、自分にどんなメリットがあるのかイメージできない」といったことになります。
そのため、記事を読んでもらうためには、書き手に「どんないいこと」があるのかを伝え、読後のイメージをポジティブに膨らませてもらう必要があるのです。
そこで役立つのが、フューチャーペーシング。記事の見通しを良くすることで読了後のイメージがしやすくなり、読むのに前向きになってもらえるのです。
フューチャーペーシングを使ったフレーズ事例4つ
フューチャーペーシングというワード自体は初耳でも、感覚的に “そういう見せ方” を実践している機会は多いはずです。
たとえば、以下の文章を見てください。
これから社員の離職率を下げるための “3つのポイント” をお伝えします。
「ポイントは3つある」と前もって伝えることで、

ほう……。その “3つのポイント” とやらを押さえればいいのか。
といった具合に読み手は認識します。
フューチャーペーシングのコツは「数字を使うこと」です。ポイントが3つあると前もってわかっているので自然と注意を払い、イメージや内容理解もしやすくなるのです。
以下も、フューチャーペーシングを活用した例です。
今からお話しする5つの条件、今日はこれだけ覚えて帰ってください!
「今からお話しする」と「今日はこれだけ〜」の部分にご注目ください。
「今からお話しする」は、冒頭の「テストに出るよー」と使い方はほぼ同じです。「これから重要なことをお知らせします」のニュアンスを出すことで、読み手の注意・関心を引きつけます。
さらに、「今日はこれだけ覚えて帰ってください!」と強調することで、読み手は「これだけ覚えればいいんだな」と認識するため、心理的負担を下げる効果が期待できます。
読了時間の目安も、フューチャーぺーシングの一種です。
この記事は 約3分 で読めます
3分を長いと感じるかは個人差がありますが、重要なのは「3分で読み切れる」という情報を前もって読み手に与えているという点です。
忙しい現代人は、「読み切るのに何分かかるかわからない記事」を、だまって読み続けてくれるほど辛抱強くはありません。
そのため、前もって読了時間の目安を伝えておくことで、読む/読まないかの判断がしやすくなります。以下のようなイメージですね。

3分か、じゃあ最寄駅に着くまでの間に読み切れるな

3分か。じゃあブックマークして、休憩中に読もう

3分だったら読んでもいいか
読了時間の目安の記載のあり/なしで、どちらのほうが直帰率が高いか、A/Bテストしてみるのもおすすめです。
なお絶対にやってはいけないのが、実際は5分以上かかるような内容を、3分などと短く偽ることです。
不動産屋の掲載情報じゃないですが、「駅近徒歩1分」と書いてあるのに、実際に測ってみて5分以上かかったら信用できないですよね。
一つの情報が偽りだった場合、他の情報まで疑わしく思えてくるので、記事の信頼性を担保するのが難しくなります。
以下の「想像してみてください」というフレーズも、フューチャーペーシングを活用した例です。
想像してみてください。3ヶ月後、洋画を字幕なしで見れるようになった自分を。
「想像してみてください」は、読み手の想像力に訴えかけ、行動をうながすのに効果的なフレーズの一つです。
『海底二万里』や『八十日間世界一周』の著者として知られる小説家・ジュール・ヴェルヌはこんな名言を残しています。
「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」と。
「理想的な状態」というのは人それぞれ違います。そのため、イメージを膨らませるための材料だけを用意したら、あとは読み手のご想像におまかせとしたほうが効果的なことも多いのです。
フューチャーページングを使ったデザイン事例3つ
商品・サービスを紹介する内容で記事を書く場合、使い方や購入手順を説明する箇所が出てくると思いますが、テキストだけで説明しようとすると情報量が多くなり、読み手の負担が大きくなります。
そこで、「フローチャート型」のような図や表、イラストなどと添えて説明する手法が用いられますが、これもフューチャーペーシングの一種と考えられます。
与えられる情報が言語情報のみの場合、脳が理解するまでに一定の時間を要しますが、図や表、イラストなどの視覚情報の場合、脳は直感的に情報を理解することができます。


上記例のように、スタートからゴールまでのステップを“箱”で表し、箱の間に矢印や数字を使って手順が示されていると、プロセスが非常にわかりやすいですよね。
テキストだけの情報よりも、格段に見やすくてわかりやすいため、記憶定着にも有効と考えられます。
また、親しみやすさを感じさせるデザイン・配色を意識することで、「とっつきやすそう」とか「わたしにもできそう」といった簡易性をアピールでき、読み手の心理的負担を下げる効果も期待できます。
また、クレジットカードの入会申し込み画面で見る「入力フォーム」も、フューチャーペーシングを活用した例です。

クレジットカードの申込みには入力必須項目が多いものですが、入力内容に不備があった場合、「○○の入力内容に不備があります」とか「必須項目はあと5つです」といった具合に、エラー表示を返す仕様になっています。
この時、入力する側の気持ちに立ってみるとわかりますが、単に「エラーがあります」と返すだけで入力進捗や、具体的にどう直したらいいのがぱっと見でわからない仕様だと、一気にめんどくさくなります。
入力フォームにおけるフューチャーペーシングでは、ユーザーが次に何をしたらいいのか、行動を悩ませない導線を確保することが重要です。
最後までストレスなく、気持ちよく入力するための配慮がなされていない入力フォームでは、営業機会の損失につながるでしょう。
読み手の反論を先回りして、速やかに処理する
ブログの文章でもPR広告の文章でも、読み手の共感や賛同を得られる文章は例外なく、書き手の主張に一貫性があるものです。
しかし筋は通っていても、「そうとは言い切れないのでは?」とか「それは違うんじゃないの?」と読み手が反論する余地は必ずあります。
もしもそういった反論に耳を貸さず、書き手の主張を押し通そうとすれば、内容に客観性を欠き、読み手の共感や賛同を得ることは難しくなるでしょう。
そこで活用したいテクニックが、「反論処理」といわれるフューチャーペーシングの一種です。
反論処理とは、読み手の反論を先回りして適切な答えを返すことで、以下のようなイメージです。

「それだと〇〇と同じじゃないの?」と思われたかもしれませんが、全然違います。
なぜなら……(+読み手の反論に対する答え)

今の説明を聞いて、「自分にはあまり必要性がないな」と思われたあなた!
実は……そういう方こそ利用するメリットが大きいのです。
というのも……(+読み手の反論に対する答え)
反論処理は、読み手がモヤっとしたタイミングで、速やかに処理することが重要です。
書き手の主張に対し、読み手が反論する可能性が高いところで、「そう思われるのも無理はありませんが、実は、○○ということが研究でもわかっているのです」といった具合に先回りして、読み手の反論を打ち消せる回答を用意しておくのです。
後で処理すればいいやと先送りにしてはダメです。その前に離脱されてしまいます。
読み手が反論するタイミングで、速やかに答えを返してあげることで、「この書き手、なかなかわかっているじゃないか」と信頼を寄せてくれます。
反論処理は、読み手との信頼関係を構築するうえでも非常に有効な手法なのです。

読み手の反応率が鈍い場合、記事の見通しが悪く、あなたの記事を読むメリットを、読み手がイメージできていない可能性が高いと考えられます。
本記事で触れたフューチャーペーシングを意識したフレーズやデザイン、反論処理などを参考にして、記事のイメージアップをはかってみてください。
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