Google NotebookLMは、ユーザーのアップロードした資料に基づいて、情報を整理したり、ユーザーの質問に答えたり、新しいアイデアを提案したりといった多彩な使い方ができる生成AIメモツールです。
NotebookLMの活用法はさまざまですが、本記事では、NotebookLMを使い始めて2ヶ月の筆者の所感をもとにお話していきます。
最近、NotebookLMを知って、「使ってみたい」とお考えのあなたに、使用イメージを膨らませるお手伝いになれば幸いです。
■NotebookLMの“LM”って何?
「NotebookLMの“LM”って何?」という方もいらっしゃると思うので、まずはそこから簡単に説明しますね。
LMは、Language Model(言語モデル)の略です。言語モデルとは、膨大な量のテキストデータを学習して、人間のような自然な文章を生成したり、複雑な質問に答えたりできるようにするためのAIだと考えてください。
NotebookLMには、「Gemini 1.5 Pro」という言語モデルが搭載されてまして、このモデルは現状、日本語プロンプトにおいて、ChatGPTの「GPT-4」を上回る性能を持つとされています。
非常に高精度で情報処理が行えることで、より自然で人間らしい滑らかな会話を可能にしています。
■“自分好みのLLM”が勝手に育つ
NotebookLMに、PDFやテキスト、Googleスライド、WebページのURLなどのデータファイルをアップロードすることで情報量が蓄積され、LMが育っていきます。
要は、ユーザーが与えた情報を養分に、LMの土壌が作られていくのです。
蓄積されたデータを情報源に、AIがユーザーの質問に回答したり、情報の要約文を返したり、重要なポイントだけ抽出したり、新しいアイデアを提案したりといったことができるようになります。
ここで特筆すべきは、日頃からストックしておいた情報や資料、WebページのURLなどの各種データを、NotebookLMに放り込んでおくだけで、勝手に自分好みのLLM(Large Language Model:大規模言語モデル)が育つという点です。
信頼性の高いデータを養分に育ったLMほど、通常のウェブ検索で手に入る情報より高精度の結果を得られやすく、AIが誤った情報を生成してしまうハルシネーションのリスクを下げることができるわけですね。
NotebookLMは、信頼性の高い情報を根拠、出展元にすることにより、ユーザーの要望に沿った回答が可能になり、説得力のある資料や記事を作成するうえで、非常に役立つのです。
■NotebookLMの最大のウリ
NotebookLMを使う上で最大のウリは、仕事で使う膨大な資料やWebページの情報を集約化し、その中からピックアップしたい内容だけを、高精度かつスピーディーにピックアップできるところかと思います。
ちなみに、NotebookLM にアップロードしたデータは、Google の生成 AI モデルの学習には使用されず、Googleがほかのサービスでも適用しているセキュリティで保護されます。
ただし、サービス改善を目的として、人間のレビュアーが資料や回答を確認する場合があるそうなので、個人情報や会社の機密情報などはそもそも取り込まないのが無難でしょう。
なおNotebookLMは、Googleアカウントがあれば、誰でも無料で使えます(本記事執筆時点)が、将来的には有料になる可能性があるため、無料のうちに使用感を確かめておいたほうがいいですよ。
■NotebookLMの主な機能

多様な情報ソース(ファイル形式)に対応
NotebookLMには、PDFファイルやテキストファイル、WEBページのURLなど、さまざまな形式の情報を取り込むことができます。

現状、アップロードできるファイル形式は、上記画像の赤枠のとおりですが、今後増えていくと思われます。
一つのテーマ(ノートブック)を作成し、そこにデータを集約しておけるので、ビジネス書から仕事のレポート、学校の論文、趣味のプロジェクトまで、役立ちそうな情報はとりあえず放り込んでおくといいでしょう。
圧倒的な量の単語を、高精度かつ迅速に処理できる
Gemini 1.5 Pro搭載のNotebookLMの情報処理は、非常に高精度で、100万トークンという圧倒的な量の単語を処理できます。
膨大なデータ量でも効率的に分析し、必要な内容だけを抽出するといった使い方ができるので、重要なポイントを見逃すことがありません。
ただし、NotebookLMはあくまで、ユーザーによって与えられた情報に基づき、回答を生成するツールです。
したがって、取り込んだデータに偏りがあったり、誤情報が混じっていたりすれば、回答の質は低下し、望むような結果を得られない場合があります。
インタラクティブ(双方向的)な情報探索
NotebookLMにチャット形式で質問を入力すると、取り込まれているデータを情報源に、AIが回答してくれます。
たとえば、「このニュースの結論は何ですか?」という質問をすれば、AIが「結論にふさわしい内容」を分析して、その要約を返してくれるわけです。
なお、回答にはその情報のソースとなった部分がハイライトされ、注釈番号が付与されるので、回答の根拠となった出典を速やかに確認できます。

多様なアウトプット形式で、個人のニーズに応じた情報整理
NotebookLMの機能で便利なのが、「ノートブックガイド」です。
この機能では、ユーザーがアップロードした情報に基づいた「要約」や「目次」、「FAQ(よくある質問とその答え)」、「学習ガイド(資料の内容に関する問題)」、「タイムライン(出来事の順番を示す表)」、「ブリーフィング・ドキュメント(要点や概要をまとめたドキュメント)」を自動で生成できます。
使い方の例としては、
・資料を複数取り込んで、特に重要なポイントをさらった概要資料を作成する。
・プロジェクトや定例ミーティングの進行状況を、タイムライン(時系列形式)で生成することで、進行状況の把握が容易になる。
・複数のWebサイトのURLを読み込ませて、「FAQ」を実行すれば、そのページ内容に基づいた「よくある質問」が作れる。
といった感じ。
多様な形式でアウトプットできるので、さまざまなニーズに対応した情報整理を叶えてくれます。
作成したノートブックの共有ができる

NotebookLMで作成したノートブックを、他者と共有することもできます。
やり方は簡単で、NotebookLMを開いて、ページ右上にある共有アイコンをクリック。それからアクセス権を付与したい相手のメールアドレスを追加し、編集権限(編集者・閲覧者・アクセス権の取り消し)を選んだら送信です。
ただし編集者権限を付与しても、ノートブックの作成者(ここでは”管理者”とします)と同様の編集権限が与えられるわけではないようです。
たとえば、管理者のチャット内容(NotebookLMへの質問や回答)は、権限付与されたユーザーの画面上では見ることができません。
なおノートブックの作成にあたり、管理者がアップロードした資料やURLなどのソースの閲覧は可能で、編集権限を付与されたユーザーが、新たにデータを追加することもできます。また、作成メモの閲覧、追加は可能です。
■NotebookLMの具体的な活用シーン

ミーティングの効率化(議事録作成・分析の効率化)
NotebookLM自体には、音声データの文字起こし機能はありませんが、他ツールで文字起こしした議事録などをアップロードし、重要な発言や決定事項などを要約させることで、会議内容の精査・分析がしやすくなるでしょう。
要約文をもとに、次回のアジェンダを作成すれば、準備もスムーズになるかと。
定例ミーティングや定期的に開催されているイベントなど、時系列で進行する議事録の分析においては、ノートブックガイド機能にある「タイムライン」が便利です。
タイムラインは、時系列的な要素を含む文章に対して有効で、時間軸に沿って進行する議題などを整理する際に重宝します。
蓄積されていく議事録の内容をタイムラインで出力することにより、議題の進展状況を時系列でわかりやすく追えるので、分析、考察がしやすくなりますよ。
顧客フィードバック分析の効率化
VOC(お客様の声)やアンケートの集計、口コミサイトの投稿文、クライアントとの打合せで録音した音声の文字起こしなどをNotebookLMにアップロードし抽出することで、顧客フィードバック分析の効率化が図れます。
ただし、NotebookLMは、あくまでユーザーがアップロードした資料に基づいて、回答を生成するツールです。なので、より実践的な顧客フィードバック分析を行うためには、分析の目的を明確化し、適切なデータを十分に揃える必要があります。
というのも、フィードバック分析の目的が、顧客満足度向上のためなのか、サービスの質を改善することなのか、それとも新商品のアイデアを得るためなのかで、必要になるデータの質や量はおのずと変わっていくからです。
なので、フィードバック分析の目的があいまいかつ、適切なデータも揃っていない状態であれば、
・「顧客が望む改善リクエストの中で、比較的実施がしやすい項目は何か?」
・「お客様の声やアンケート結果から推測される、自社商品Aのコア・コンピタンス(他社にはない自社の強み)は何か?」
といった質問をNotebookLMに投げかけても、精度の高い納得感ある返答はなかなか得にくいでしょう。
NotebookLMは、良くも悪くもデータの質と量に依存するツールです。ただ言い換えれば、データの質や量にこだわればこだわるほど、より高精度の分析が可能になり、効果的な戦略や意思決定ができるようになっていくのです。
法的文書の補助的チェックツールとして
契約書などの法的文書って、複雑な内容が多くてわかりにくいですよね。
そこで、NotebookLMにデータを読み込ませることで、複雑な内容をわかりやすく整理したり、重要な条項や潜在的なリスクを特定するといった活用ができます。
たとえば、ノートブックガイド機能には「FAQ」というのがあるので、NotebookLMに契約内容に関する質問をし、答えさせるといったBot的な使い方が便利です。
ただし、NotebookLM自体は、専門家による法的助言の代わりになるものではありませんので、契約書など法的文書を扱ううえでは、補助的ツールとして使うくらいがいいでしょう。最終的な契約内容の確認や法的判断においては、必要性に応じて専門家に相談すべきです。
また、先述のとおり、NotebookLMにアップロードされたデータは、Googleの生成AIモデルの学習には使用されないものの、サービス改善のために人間のレビュアーが資料や回答を確認する場合があるとされています。
そのため、契約書や社外秘資料など機密性の高い情報を、NotebookLMにアップロードすることは推奨されていません。
読み込ませるにしても、暗号化して使うなどセキュリティリスクを十分に理解して、ルールや法律に沿って適切に扱うことが大切です。
複数の論文の比較分析、ポイント整理を容易に
論文は、情報量が膨大かつ内容も難解であるものが多く、比較分析に時間と労力がかかるというのが一般的です。
そこで、複数の論文ファイルをNotebookLMに読み込ませて、
・「これらの論文で共通している内容を挙げて」
・「各論文の結論を要約し、比較表を作成して」
といった具合に、各論文のポイントや結論、共通点、相違点などを答えさせることで比較分析がしやすくなり、新たな発見や洞察を得ることにもつながります。
また、論文の比較分析を行う上で重要になってくるのが、その情報の出所と信頼性ですが、先述のとおり、NotebookLMでは質問の回答に対する出典(エビデンス)が、注釈番号付きのハイライトで表示されるので、「信頼できる情報か」の判断もスムーズです。
過去問の分析による試験対策
NotebookLMは、資格試験などの学習ツールとしても活用できます。
たとえば、試験の過去問題や参考資料などをNotebookLMに取り込んで、ノートブックガイド機能の「学習ガイド」を使うと、そのデータに基づいた小テストを生成することができます。
以下は、「医療広告ガイドライン(医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針)」に関する複数の資料をNotebookLMに読み込ませて、学習ガイドにて出力したものになります。
以下のような問題を作成してくれました。

こんな感じでクイズ感覚というか、ゲーミフィケーションの良さを生かした学習ができます。学校の先生が重宝しそうな機能ですよね。
この学習ガイド機能と併せて、「過去問題から出題傾向をまとめてください」といった感じで指示を出せば、自分に合った学習プランも立てやすくなると思います。
新しい読書体験の提供
読書の効率化にも、NotebookLMは非常に有効なツールとなり得ます。
ただし、一度も読んでいない本をNotebookLMにいきなり読み込ませても、効果的な質問ってまずできないので、読了した本の復習に使うのが向いていると思います。
私の場合、最初は普通に読んでいきます。次に、スクショしたページをNotebookLMに読み込ませ、以下のように要約やポイント整理を行い、インプットの促進に役立てる感じですね。
・本の要約: 本(PDF、テキスト)を読み込ませるだけで、NotebookLMが自動的に内容を要約。長編小説や難解な専門書を読む際に特に役立つ。
・疑問点の解消: 読了後に生じた疑問点や理解の浅い箇所をまとめて、NotebookLMに質問。本の内容に基づいて精度の高い回答してくれるので、実践的理解につながる。
・重要箇所の抽出: 本の内容から重要なポイントをハイライトで抽出。NotebookLMとの対話や得られた情報を基に、自分だけのノートを作成できる。
・理解度を測る: 「学習ガイド」で小テストを実施。本の内容、本質をちゃんと理解できているかどうかをチェックできる。
NotebookLMを読書ツールとして活用することで、新しい読書体験が可能になり、インプット精度をより高めることができます。
ただし、インプットの効率性を重視するあまり、本を読むことの本来の楽しさが損なわれてしまったらもったいないので、その本や資料を読む目的、用途に応じ、「NotebookLM読書」を上手に取り入れていきたいものですね。
■NotebookLMのイマイチなところ

抽象的な質問にはうまく答えられない
NotebookLMは、具体的な情報源に基づいた質問に答えることに長けています。一方、抽象的な質問にはうまく答えられないことがあります。
そのため、ブレスト目的な使い方には不向きなのですが、引用元を提示できない場合、不正確な回答を避けてくれるので、生成AI独自の曖昧さを回避できます。
わたし的には、「データが無いんで答えられないっす」とパーンと突き返してくれたほうがありがたいので、この仕様はむしろ歓迎ですが。
ただし、わからないなりに「〇〇についての情報はソースにありませんが、▼▼といった内容から■■と関連性のある言及があります。これにより〜」といった具合に回答してくれる場合があります。
限られた情報の中でも、最善のサポートを提供しようとするところは、NotebookLMの特徴と言えますね。
何度もしつこいですが、NotebookLMはあくまで、ユーザーが入力した情報に基づいて回答を生成するツールです。ゆえに入力された情報に誤りや偏りがある場合、それが出力に反映される可能性は十分にあります。
これはある意味、ハルシネーションの問題と関連しているとも言えます。NotebookLM自体は、ハルシネーションを起こすわけではないものの、入力情報に依存して回答を生成する性質上、結果的に誤った情報が含まれてしまう可能性は、留意する必要があるでしょう。
日本語資料の対応は限定的
NotebookLMは、「Gemini 1.5 Pro」を搭載しており、日本語プロンプトにおいても非常に高精度で処理してくれます。
しかし、日本語資料への対応は限定的であり、期待する結果を十分に得られるレベルには達していないという見方もされています。
Googleは今後、対応言語を拡大していく予定としていますが、日本語特有の複雑な言い回しや固有名詞、時事的、文化的なニュアンスなども含まれるほど、回答の正確性が損なわれる可能性が高くなると見ていいでしょう。
そのため、プロンプトはできるだけシンプルな言い回しにする、複数の質問を同時にしない、作成した文章を英訳して使うといった工夫をすることで、より正確で自然な日本語による回答を得やすくなると考えられます。
このあたりは、ChatGPTなどを普段から使っている人ならなんとなくわかるかと思いますが、実際に試しながら、NotebookLMの性能、制限を理解していく必要があります。
ちなみに、NotebookLMに日本語の論文を読み込ませたところ、一部の数式がテキスト形式に変換されてしまったこともあったので、取り込んだあとの内容がおかしなことになっていないか、しっかりと目視するといいですよ。
ソース(取り込んだ情報)の編集はできない
NotebookLMは、アップロードしたソース自体の編集機能を提供していません。元のファイルに影響を与えないよう、取り込んだ資料は静的なコピーとして扱われます。
ソースの直接編集ができないため、ソースに修正が入った場合は元のファイルを編集し、再アップロードすることで最新の情報を反映させることができます。なお、取り込んだソースの名称は取り込んだ後からでも変更可能です。
PDFの場合、そもそも原本を編集できなかったりしますが、Webサイトの文章などを取り込む場合は、URLをそのまま貼り付けて読み込ませるより、不要な部分をカットし、不備のある部分を編集してからテキストファイルに落とし込んでアップロードするのがおすすめです。ソース選びにもひと手間かけることで、より有能なLLMに育てていくことができます。
情報の整理や管理はしにくい
NotebookLMは情報をインプットし、理解を深めるためのツールとしては非常に有能なんですが、取り込んだ情報の整理・管理においては、Notionなどのほうが、正直使いやすいと思いました。
また、ビューが悪い意味でプレーン過ぎて、正直見にくいです。今後、フォントのカラーやサイズ、背景色、ソート機能なども追加されたら嬉しいですね。
とはいえ、どんなツールにも得意不得意があるものですし、NotebookLMが不得意とする部分は他ツールで補うことで円滑に利用できるでしょう。
■ナレッジワーカーのための、心強いパーソナルアシスタント

わたし自身、NotebookLMを使いこなせているとは言い難いのですが、どんなツールなのかをわたし的に表現するなら、「膨大な資料の中から必要な情報を瞬時に探し出してくれる、ナレッジーワーカーのための頼れるパーソナルアシスタント」でしょうか。
回答にバラつきがあったり、見やすさに難があったり、共有機能が整備されていなかったりと改善すべき点も見られますが、実験的な段階でこのクオリティで、しかも無料で使えるのだから、「使わない」選択肢はないですね。
実際に使ってみて、ウィークポイントが目につくようであれば、そこは他のツールと組み合わせて補えばいい話ですし、むしろ他のツールと組み合わることで、NotebookLMの活用術が広がるでしょう。
今後の機能改善や日本語対応の強化にも期待が高まります。本記事を通じて、「NotebookLM、ええやん」と思えたら、ぜひ使ってみてくださいね。
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小テスト
以下の問題に簡潔に答えてください。
1.質問:医療広告ガイドラインの基本的な考え方を2点挙げてください。
回答:医療広告ガイドラインの基本的な考え方は、
(1)医療は人の生命・身体に関わるサービスであり、不当な広告による被害は著しいこと、
(2)医療は専門性が高く、広告の受け手は質を判断することが困難であること
の2点です。