景品表示法務検定は、景品表示法(以下、景表法)に関する知識や法的な理解を評価するための資格試験です。
主に、企業の法務部門や販促・広告担当者向けに、景表法に関する正確な理解を深め、適切な法令順守を確保するための資格試験になります。
合格者は、景表法の基礎知識を一定以上有する者とみなされ、企業が提供する商品・サービスの広告表示等を監視・監督する管理担当者としての役割や、消費者保護のための取り組みに貢献できることが期待されます。
【激ムズ?】平均2割以下と合格率は低め
景品表示法務検定の過去の受験者数、合格者数は以下のとおりです。
受験者の大半が法務関連職と考えると、平均2割以下の合格率は、わりと低めでしょうか。
受験のきっかけはステマ規制
わたしが本試験を受験したきっかけは、2023年度10月1日より施行された、「ステマ告示(一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示を禁止する告示)」です。
ステマ告示の運用基準の理解および実務対応力の強化として、景表法を基礎から学びたかったこともあり、資格取得というゴールが明確にあったほうが、学習意欲も高まるだろうと受験を決めました。
ちなみに、わたしは都内の某広告代理店に勤務していますが、法務部やコンプライアンス部門の所属とかではなく、法務知識を日常的に求められるようなポジションではありません。
不当表示に関しては、業務上関わってくる部分であることから、一定の知識はありましたが、景品類や懸賞、公正競争規約、措置命令、課徴金制度などに関しては未熟なレベルでした。
過去問題集がないため、対策を立てづらい
また、試験対策を講じるにあたって、「マジかよ」と思ったのが、過去問題集が販売されていないことです。
いちおう、景品表示法務検定の公式サイトに例題が1つ掲載されているので、雰囲気程度ならつかむことができます。
また、学習にあたって、参考書の紹介などのアドバイスがありました。
出題範囲は、景品表示法全般です。消費者庁ウェブサイトに掲載された景品表示法に関する各種の公表資料や景品表示法の概要等を解説した参考書に習熟するとともに、 一般社団法人全国公正取引協議会連合会が実施する景品表示法に関するセミナー、研修会等も活用しつつ、学習を進めることにより、 景品表示法務検定の合格に必要な知識・能力を身につけられると考えられます。
【出典】一般社団法人 全国公正取引協議会連合会:「景品表示法務検定の問題 」より
⇒ 消費者庁ウェブサイト
過去問などをまとめた問題集は販売しておりません。適否を問う2択問題(上記出題例)を意識して、 市販の参考書を読むのが近道ではないかと思われます。
【出典】一般社団法人 全国公正取引協議会連合会:「景品表示法務検定の問題 」より
(参考書の例)
a 「景品表示法」(商事法務)
b 「景品表示法の法律相談」(青林書院)
c 「広告宣伝・景品表示に関する法律と実務」(日本加除出版)
d この他、学習するに当たっては「景品表示法関係法令集」(一般社団法人全国公正取引協議会連合会刊)を適宜参照されることをお勧めします。
これまで受験された方から、公正競争規約を覚えるのが難しいということもお聞きしています。公正競争規約の概要については、当連合会の次のページが参考にしていただけます。
【出典】一般社団法人 全国公正取引協議会連合会:「景品表示法務検定の問題 」より
⇒ 公正競争規約とは
⇒ 公正取引協議会・公正競争規約一覧
上記のページの中で、全ての公正競争規約が閲覧できますのでそれを順にご覧いただくのが良いかと思います。 規約の数はたくさんありますが、構成はどれもほぼ同じですから、それほど苦にならず読破可能かと思われます。
わたしは実際に試験を終えてみて、アドバイスどおりと思えたので、公式サイトの情報には一通り目を通しておくことを推奨します。
また、消費者庁サイトに掲載されている景品表示法に関する内容や資料も非常に参考になりました。
わたしは消費者庁サイトに限らず、役立ちそうな資料は片っ端からストックしてましたが、以下の資料とかおすすめです。
イラストが豊富で、簡易な言い回しや身近な例を用いながら説明されているものも多いので、初学者にもとっつきやすいですよ。
景品表示法務検定に勉強期間2ヶ月で挑んだ結果
受験を決めたのが9月の後半で、試験日は11月の後半。準備期間はちょうど2ヶ月ありました。
正直、間に合うのか不安でしたが、結果は84点で、スタンダード(80〜89点)クラスに合格できました。
合格率は低いし、過去問がなくて対策が立てづらいし、X(旧ツイッター)でも「激ムズ」の声が散見されたし、直前まで「多分ムリだろう」と思っていました。
もともと再受験を見越して受けたのもありますが、かえって肩の力を抜いて挑めたのかもしれません。
過去試験の配点及び平均点は以下のとおり。CBT(Computer Based Testing)試験なので、終了後すぐに採点結果が表示されます。
帰りに印刷されたスコアシートをもらえるのですが、ポケットにつっこんで歩いてたら速攻で無くしました。受付の方、ごめんなさい(笑)
配点の内訳のみが記載され、どの問題を間違えたのかはわかりませんが、「2 不当表示」は自信あったのに32点だったのが悔しかったですね。
なお試験合格者は、全国公正取引協議会連合会が開催する景品表示法セミナーを特別料金にて受講できるそうです。法務系セミナーって結構高いので、この特典は何気においしい。
重箱の隅をつつくような難問は少なかった
たとえば、「景表法5条2号における・・・」みたいな問題があったとして、「2号ではなく正しくは3号です」みたいな意地の悪い問題ばかり出るのではとビビってましたが、基本的な内容を問うものが大半で、「想定していたよりは難しくなかった」というのが、わたしの率直な感想です。
とはいえ出題範囲が広く、各分野から偏りなく出題されるため、最初は理解が追いつかないのは承知で、全体を浅く広く、外堀から少しずつ埋めていくイメージで、学習を進めていくといいかもです。
おすすめできないのは、不得意分野を捨てることです。たとえば、公正競争規約の内容が、ご自分の職務や業界との関連性が低いと捨てたくなるかもしれませんが、先述のとおり、各分野から偏りなく出題されるので、苦手分野の学習を怠ると、あっさり失点します。
得意分野を伸ばすよりも苦手分野をなくし、全体をバランスよく底上げしていくほうが、8割マークしやすくなるかと思います。
教本は何を買えばいい?
景品表示法務検定の公式サイトでは、以下4つの参考書を学習教材として推奨しています。
上記のうちでメイン教材となるのが、 “緑本”こと『景品表示法(第6版)』で、極論、この1冊を極めれば受かると思います。
もちろん、全冊揃えても良いとは思いますが、結局は自分に合ったものでないと使わなくなりますし、テキストが多すぎると力が分散し、かえって頭に入りにくくなる場合もあるでしょう。
実際、わたしは緑本しか購入してませんが受かりましたので、緑本はマストで購入し、他は必要性に応じて検討すればいいかと。
約3年ぶりの改訂版となる『景品表示法(第7版)』が、24年9月5日に発売されました。なお現在は紙書籍のみで、電子書籍(Kindle版)では出ていない模様です。
緑本はある程度の法務知識がある方を対象としており、法令用語や業界用語、日常的に使わない言い回しが多いです。
たとえば、「欺瞞的」「射倖心を煽る」「勘案」「参酌」「取引の価額」といった、わかるようでよくわからない的なワードが頻出します。
わたしの場合、自分的に覚えにくい言葉や用語が出る度に、iPad Pro(12.9インチ)のメモ機能を活用し、自分なりの解説や周辺知識を添えて覚えるようにしていました。
12.9インチは、表示サイズが大きくノート感覚で扱えますし、メモ(注釈)やマーカーの種類、検索などの機能が充実しているので、学習効率大幅に引き上げられます。
重要なのになかなか覚えにくい用語や説明って、単体で覚えようとしてもなかなか難しいので、関連性の高い情報と一緒に膨らませて、体系的に覚えたほうがいいかもです。そのほうが本質的に理解できて、記憶にも残りやすくなります。
ちなみに緑本は、365ページと若干、大きめのサイズなので、持ち運びの際に多少かさばりますが、タブレットなら少しも邪魔になりません。
短い学習期間で合格を目指す場合、少しでも効率が良いと思える学習法や学習プラン、ツール選定が重要になってきますので、個人的には iPad Pro(12.9インチ)のような大画面サイズのタブレットを活用した学習をオススメしたいですね。
なお景品表示法務検定の公式サイトでは紹介されていませんが、「景表法ってなに? おいしいの?ってな」レベルから始める初学者には、“オレンジ本” こと『はじめて学ぶ景品表示法』から入るのもいいかもしれません。
オレンジ本は緑本に比べてページ数が少ないですし、事例が多く掲載されているので、イメージがつきやすいです。
具体的な商品・役務(サービス)を例に、どういった表示が不当表示に該当し、どんな罰則が適用され、どんな処置対応が必要になってくるのかといった一連の流れなどをシンプルに、わかりやすく解説しています。
緑本は法務知識がある人でも、難解に感じられる内容が多いので、初学者はオレンジ本でリーガル耐性をある程度つけてから緑本にステップアップするほうが、学習意欲を落とさず継続しやすいかもです。
また、オレンジ本は本試験の対策教材としてはもちろん、情報更新用の1冊としても使い勝手がいいので重宝しています。
さいごに
本記事は、景品表示法務検定に関する有益な情報を少しでも集めたくて、いらっしゃった方が大半だと思いますが、さいごにちょっとしたアドバイスをして筆をおきます。
景品表示法務検定は全50問で、制限時間が90分です。見直し時間を考えると、1問につき100秒目安でさばくイメージです。
8割以上で合格なので、「解くのに時間かかりそう」と思ったら問題は躊躇せずにいったん飛ばして、先に進みましょう。
長考した挙句に間違えるというのが一番やってはいけないパターンなので、確度の低い問題を後回しにする判断スピードも重要になってきます。
一度、全ての問題に目を通せれば、気持ち的にも余裕が出てきて冷静になりますし、最初は難問だと思えたものでも案外解けたりするものです。
また、 緑本こと『景品表示法(第6版)』をマスターできれば受かるとは言いましたが、こちらは2021年の発売なので、直近の改正内容にともなう変更点などについては、カバーしきれていない部分が当然あります。
たとえば、、令和5年10月から施行された「ステマ告示」や、それより少し前に成立した改正景品表示法に関連した問題が多めに出された場合、学習教材が緑本のみだと、大量失点につながる確率が高まります。実際、令和5年度の試験では、ステマ告示に関する問題がちらほら見受けられました。
わたしはこの点を留意し、消費者庁サイトなどから資料をダウンロードして、緑本でカバーしきれてない部分や時事的な情報をさらってました。これだけでも十分に失点を防ぐことができましたよ。
24年9月5日には、待望の改訂版となる『景品表示法(第7版)』が発売されましたので、現在6版で学習している方も、最新版でキャッチアップすることをオススメします。
わたしの経験則が、微力ながらもお役に立てれば嬉しいです。
ご精読ありがとうございました。
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景表法に特化した検定資格自体がそもそも少ないのと、消費者庁の後援を得ている試験なことから、所有価値はそれなりに高いと思われます。