書くための情報は揃えた。考えも構成も十分に練った。
……なのに筆が進まない。原稿を書くことになかなか集中できない。
「集中できないのは意志力が弱いからだ」とまとめられがちですが、意志の強さで集中力を維持しようとしても上手くいかないんですよね。
個人差もあるでしょうが、人が集中力を持続できる時間は90分が限界といわれています。ちょうどサッカー1試合ぶんですが、わたしなら前半だけでもキツイですね。
わたしはもともと飽きっぽい性格ですし、意志力の弱さにも定評があります。そのため、意志の強さどうこうでは上手くいきません。
なので経験上、自分的に “集中状態” にもっていきやすいとわかってる仕組み(習慣)を維持する ことを徹底させてます。
うまくいった成功体験もある仕組みということもあり、「自分はこれをすると集中できる」という暗示効果もあります。
カッコつけていうと、イチロー選手が常に同じ動き(ルーティンワーク)をしてバッターボックスに入るような感じ。
あてにならない意志力に期待するより、一定以上の集中力を発揮できる再現性が高いのです。

そこで今回は、某広告代理店の編集者兼ライターのわたしが、原稿のライティングに集中するためにやっている「10の攻略法」をお届けします。
もくじ
①: “場所ニューロン” で集中力を高める

仕事や勉強する場所を変えるだけで集中力が高まり、記憶力もアップする効果があることが、ミシガン大学の研究でも実証されています。
なぜ場所を変えると記憶力がアップするのかですが、簡単にいうと、“覚えた情報” と “記憶した場所” とのリンクが考えられます。
記憶する場所が変われば、思い出すための手がかりも増えます。そのぶん人の記憶力を司どる部位・海馬にある「場所ニューロン」が活性化されます。
要するに脳の仕組みの話で、人は記憶したい内容を単体で覚えるより、場所や状況、エピソードなど何かしらの情報と関連づけて覚えるほうが頭に入りやすく、記憶にも定着しやすい のです。
わたしは基本的に在宅ワークなんですが、家にこもりきりでは集中力がもたないので、毎日カフェに行って2〜3時間ほどノマドワークしてます。
カフェで仕事や勉強する習慣がつくと、「カフェに来たし仕事するかー」とマインドが勝手に切り替わります。
わたしの感覚的には、カフェは休憩所というよりオフィスですね。
あと集中力って一度途切れちゃうと回復するのに時間がかかります。なので切れる前に、早めに移動して仕切り直すのがおすすめです。
歩いて移動することで気分転換とエクササイズ効果も得られるので、脳疲労を回復しストレスの軽減効果も期待できます。
②:タスク完了後の “ごほうび” を用意する

人は見返りがないと、なかなか行動しません。わたしはタスク完了後の “ごほうび” を用意することで、自分に発破をかけてます。
「終わったらご褒美がある」と自分的にアガる状況をつくることで、脳に「シータ波」とよばれる脳波が発生します。
テキサス大学の調査によると、シータ波が出ているときは学習速度は2〜4倍にもなるとの行動上データがあり、前向きな感情で執筆に向かうことができるのです。
ご褒美はちょっぴりアガるくらいがいいです。甘やかしすぎると要求がエスカレートしていって頑張らなくなっちゃうので。
わたしの場合、このタスクを1時間で片したら、、、
・「セブンイレブンのニューヨークチーズケーキを食べてよし」
・「愛猫との5分間のもふもふタイムを許可する」
といったささやかなもの(笑)
単純ながら、ミッションクリア的なゲーム要素もあって達成感も得られます。
何も設定しない場合と比べて、集中力とモチベーションの持続効果に差が出ますよ。
③: “33分33秒” のサイクルで無理なく集中力を発揮させる

さきほど、人の集中力を持続できる時間の限界は90分といいました。
集中力に自信があるよって方でも、その日の気分やコンディション、タスクの得意不得意によっても持続時間は短くなります。
無理なく集中力を持続させるコツは、「もうちょっとイケたな」と常に余力を残す です。
わたしは原稿を執筆する際、タイマーを “33分33秒” にセットし、鳴ったら5分休憩してから再開するサイクルでやっています。
これはネタ元がありまして、アメリカの伝説的コピーライターのユージン・シュワルツが提唱した集中力を長時間持続するためのペース配分で、「33分33秒の法則」といいます。
やり方は以下のとおり。
①:タイマーを「33分33秒」にセットする
②:執筆中は書くこと以外の作業はしない
③:タイマーが鳴ったら、キリが悪くても速やかに筆をおく
④:タイマーを5分セットして休憩。5分以上は休まない
⑤ :①に戻って繰り返す。
時間管理の手法はいろいろ試しましたが、自分的にもっとも合うのが、33分33秒サイクルでした。
無理なく集中力を持続できる長さで、疲労やストレスも溜まりにくくなった実感があります。
③の「キリが悪くても速やかに筆をおく」を補足しますと、筆がノッてくると時間をオーバーしてでも書き続けたくなる衝動に駆られますよね。
でもそこは堪えて、タイマーが鳴ったら速やかに筆をおいてください。でないとタイマーの意味がなくなるのもありますが、中途半端なところで作業を止めることで、「ツァイガルニック効果」が発動します。
ツァイガルニック効果とは脳の仕組みの話です。簡単にいうと、人の記憶は完了した物事よりも、“未完了の状態” で残ってる物事の方が記憶にとどまりやすい のです。
作業をキリのいいとこまでやってしまうと、脳的には「この作業は完了した」と認識します。
すると作業を再開する際、脳的には「もう終わったやん」なので、休憩前の集中状態を取り戻すアイドリングに時間がかかっちゃうのです。
そのため、中途半端なところで筆をおいて、脳に「まだ途中だよ」と認識させたままにしておくことで、休憩を挟んだあとでも作業ペースを素早く取り戻すことができるのです。
④:作業前のBGMでスイッチを “ON” へ切り替える

わたしは仕事に取り掛かる前、音楽を2、3曲聴くのをルーティンにしてます。
よく聴くのは、サッカーの「FIFAアンセム」。RIZINテーマ曲の「Theme of RIZIN」。佐藤直紀さんの「DEPARTURE」(TBE系列ドラマ「GOOD LUCK!!」のオープニングテーマ)といったスポーツで使われる入場曲的なものが多いですね。
作業前に気分が高揚する系統の曲を聴くと、スイッチが “ON” に切り替わる感があり、集中状態に入りやすいと感じます。
そもそもBGMは、労働者の生産性を上げるために使われ始めたルーツがあるので、作業前に気分のアガる音楽を聴くことは、「やりたくない作業」へのモチベーションや集中力を高めるうえでも理に適っています。
構成やアイデアを練ったりと、原稿の執筆作業は脳の負荷が大きいタスクです。
なかには「気が進まない」内容だって当然ありますし、手をつけるのが億劫なときもありますよね。
そんなとき、カンタンに脳の状態を「快」へと変化させられる方法が音楽。好きな曲を聴くことでドーパミン(神経伝達物質)が分泌されやすくなり、前向きな気分になれます。
モチベーションが下がると頭が回らず、集中力も上がりません。
わたしは、Spotifyで自分的にアガる選曲リストを大量に作成してストックしてます。
⑤: 休憩は “グリーンエクササイズ” を意識する

集中力を長時間維持するためにも、休息を上手にとることは大切です。
わたしはコロナ禍で在宅ワークがメインになってからは、「グリーンエクササイズ」を意識した休憩をとるように心がけています。
エクササイズといってもガッツリ運動する必要はなく、公園や湖、河川敷といった緑や水の存在を身近に感じられる場所で休憩 をとるだけです。
なお散歩やストレッチなど軽めの運動を取り入れると効果的。屋外で行うエクササイズは5〜10分程度の短時間でも気分が向上し、ストレス軽減や疲労回復効果が期待できます。
近所に川や森、湖がなくても、噴水のある公園のベンチに座って、ぼんやりと空や雲、鳥、木などの自然を意識して眺めるだけでもOKです。
一日中家のなかで過ごし、パソコンの前から離れずに受動的に休むのと、緑や水を感じられる場所に赴いて能動的に休むのとでは、どちらがリフレッシュ効果が高いかは言うに及ばず。
日頃からグリーン(自然)不足を感じているほど、グリーンエクササイズで得られる恩恵は大きいはずですよ。
⑥: “噛む習慣” で集中力をアップ

わたしはコロナ禍でテレワークに移行したのを機に、仕事中のガムを習慣づけました。
ガムを噛みながら仕事をすることで、仕事上のストレスや疲労感が薄れ、不注意・仕事の遅れや認知上の問題(勘違い)が減少する(※)ことが、複数の実験や試験結果からも明らかになっています。
【参考】ロッテ噛むこと研究室:「月曜の朝こそ、ガムを噛もう 噛むことと仕事上のストレスの関係」より。
【実験内容】フルタイムで働く大学職員男女126人を対象とした実験で、ガムを噛むグループと噛まないグループの2つに分けて、ガムを噛むグループには一日ガムを噛みながら仕事をしてもらい、ガムを噛むことが仕事の幸福感とパフォーマンスに影響を与えるかを評価したもの。
もともとガムを “噛む習慣” がなかったので恩恵を得やすかったのかもですが、噛んでいなかったときよりも集中が途切れにくく、眠気やイライラを感じにくくなりました。
歯の健康を考えたら、やはりキシリトールがおすすめです。虫歯の原因になる酸を作らず、毎日長時間噛んでいても歯に悪影響を及ぼしません。
同じ味だと飽きるし、噛む効果も薄れてくる感があるので、わたしは複数の味を選べる ロッテ キシリトールガム 7種アソートボトル 143g×6個入 をデスクに常備してます。
⑦: 全てのベースは “睡眠” から

書く作業に限らず、睡眠は全ての活動においてベースとなるものですよね。
質の高い睡眠がとれていれば、気力・体力ともに充実し、高い集中力を発揮しやすくなり、仕事や勉強のパフォーマンスにも好影響を及ぼすと考えられます。
また睡眠の充足度が高いと、「自分をコントロールできている」感覚が得られ、自己肯定感も高まります。
とはいえ質の高い睡眠を毎日とるのって難しいですよね。わたしもたいがい寝不足なので、仕事の合間に「パワーナップ」をとってカバーするようにしています。
パワーナップとは、12時〜15時ぐらいの時間帯に、20分程度の短い仮眠をとること。GoogleやNIKEなどの世界的企業が導入していることでも注目されるようになりました。
ランチをガッツリいった後の午後、眠気がツラいですよね。眠気を気合いでやり過ごすのは非効率なので、仮眠をとった方が効率よく脳の疲れを取ることができます。
仮眠といっても、ベッドに入ってガッツリ寝入る必要はありません。わたしはアイマスクをして軽く目をとじ、イスにもたれかかった状態で20分程度の仮眠をとることが多いです。
机に突っ伏す。イスにもたれかかる。といった体勢のほうが、首にある交感神経節がほどよく刺激されるので効果的です。
注意点は30分以上寝ないこと。完全に横になると寝入ってしまい、ノンレム睡眠のステージ3以降に入りやすくなるので逆効果になってしまいます。タイマーは必ずセットしましょう。
パワーナップで効率的に休むと、午後の作業のはかどり具合が全然違ってきますよ。
⑧: “呼吸が浅い” と集中力が途切れやすい

執筆中に集中が切れたとき、「なんか呼吸が浅い。息苦しい……」と感じることないですか?
わたしがまさにそうなんですが、作業中に集中が途切れたとき、両肩が無意識に上がっていて「息苦しさ」を発生していることが多いんですよね。
呼吸が浅くなると脳に十分な酸素が送り込まれず、集中力が途切れがちになります。注意力の欠如や意志力の低下にもつながるため、パフォーマンスが著しく低下します。
普段から呼吸が浅い、深い呼吸がしにくいと感じている人は、両肩が無意識に上がった姿勢を取りがちで、肩や首・胸・背中まわりが常に過緊張でガチガチな人が多いと思います。
首や肩、背中まわりの筋肉が緊張して固まっていると、第一肋骨が上にズレていって両肩が上がります。すると肩甲骨ごと肩が前に出る「巻き肩」の姿勢にもなりやすくなる。
肩が上がりっぱなしの状態が長く続くと、筋肉はその状態を「正常」だと認識するようになり、本来の位置よりも上がった状態がデフォルトになります。結果、呼吸は浅くなります。
対処法は「肩を押し下げる動き」を意識的に行うこと。肩が自然に下がった定位置に戻してあげる必要があります。
わたしは、YouTubeチャンネル「美容整体アピアランスTV」で紹介されている以下のストレッチをほぼ毎日やっているんですが、おすすめです。
動画を見ながら鏡の前でストレッチ前後で比べてみると、肩が明らかに下がっているのわかると思います。
両肩が下がれば呼吸がしやすくなるので、頭がスッキリします。また、首まわりがスッキリすることで細長く見えることから小顔効果もありますよ。
⑨: 締切(デッドライン) を常に設定する

仕事の場合、基本的に締切が設けられているものですが、ブログの原稿などを執筆する際も、締切(デッドライン)を設定すべきです。
締切のない作業は緊張感に欠け、集中力やモチベーションの低下要因になりますし、脳は時間制限があったほうが活発に働きやすくなるという特性があります。
学生の頃、中間テストまで「あと2週間」と「あと3日」とでは、エンジンのかかり具合が全然違ったはずです。
脳に締切を意識させ、危機感をもたせることにより、集中力が発揮されやすくなります。
とはいえ、ギリギリまで追い詰められないと高い集中力が発揮できないようでは、執筆のパフォーマンスは安定しません。
スピード・品質ともに担保するためにも、「ペース上げないとヤバいかも……」くらいのタイトさで、緊張感・拘束感がある強度がいいでしょう。
期限そのものがないタスクもあるでしょうが、ないなら自分で設定するくらいの気概を持つべきです。
時間に余裕がありすぎたり、終わりが見えなかったりすると、怠けや油断といった感情が入り込む余地が生まれてしまいます。
「締切(デッドライン)を常に設定する」。たったそれだけで集中力が高まり、維持する力も授けてくれるのです。
⑩:相手をスケジュールに巻き込んで自分を鼓舞する

先述の締切効果と付随しますが、わたしは期限が特にないタスクであっても、「8月10日の16時までに提出します」などと宣言するようにしています。
理由は主に2つあって、ひとつは宣言した方が忘れにくくなるから。もうひとつは、相手をスケジュールに巻き込む責任で、自分を鼓舞するためですね。
自分のなかにだけ存在するスケジュールだと、たとえ間に合わなかったとしても、「他にやることがあったから仕方がない」とか「次は気をつけよう」とか「まぁ、誰にも迷惑はかかってないからいっか」みたいに終わるからです。
一方、宣言して相手を巻き込んだ場合、相手はこちらの指定した日時に合わせて、スケジュールを組んだりすることも考えられますよね。
もし遅れようものなら、相手の貴重な時間を奪うだ気でなく、信頼関係にヒビが入る要因にもなりかねません。
相手をスケジュールに巻き込むことで、自分に適度なプレッシャーと拘束力をかけることができます。
脳は時間制限があったほうが活発に働きやすくなる特性があるので、時間への意識も高まり、集中力も発揮されやすくなります。
自分を効率よく動かすための仕組みとして、「周囲を巻き込む」はとても有効だと思いますよ。

おさらいです。気になったところは、読み直してみてくださいね。

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