いきなりですが、3つ簡単な質問をします。状況を想像して、ちょっと考えてみてください。
A:案件をテキパキさばく、忙しそうな山田くん
B:頬杖ついてスマホをいじる、暇そうな田中くん

【Q2】お昼休憩中、あなたはラーメンが食べたくなって外に出ました。
AとB、どちらのお店に入りたいと思いますか?
A:お店の外から、カウンター席が満席なのがわかるA店
B:お店の外から、カウンター席がガラガラなのがわかるB店

【Q3】今日は楽しみにしていたマンガの発売日です。
あなたは、AとB、どちらのお店で買いたいと思いますか?
A:駅前にある、いつも大勢のお客さんで賑わっている大型書店
B:駅前にある、いつも閑散としている個人経営の書店
3問とも「A」と答えた人が多かったと思います。
そして質問の共通点が、「人(店)が忙しそうか、ヒマそうか」であることもすぐに気づいたでしょう。
お店でもネット集客でも「見込み客の購買意欲を高める」うえで効果的なのが、そのお店(商品・サービス)は「人気がある/売れている/繁盛している」と印象づけることです。

人は無意識に、以下のような心理が働きます。

仕事を依頼するなら、忙しそうな人に頼みたい。

どうせ買うなら、繁盛しているお店で買いたい。

閑散としてるお店より、お客さんが入っているお店のほうがおいしそうに見えるんだよな……。
ちょっとわかりにくいと思うので、一例を挙げてみます。
あなたは初めて行くヘアサロンに予約の電話をかけていて、担当を指名するかで悩んでいます。
その際、受付の人から以下のような説明を受けました。

明日ですと山本か石田でご案内できます。どちらもトップスタイリストでオススメですが、山本は先ほどキャンセルが出まして、14時から1枠だけ空きがございます。石田はどの時間帯でも可能です。ご指名されますか?
ランク的には同列で片方は「たまたま1枠空いた」で、もう片方は「いつでもOK」という情報を得たあなたは、、、

(1枠しか空きがないってことは山本さんは売れっ子だからウデも良さそうだな。石田さんはいつでも入れるってことはあまり評判よくないのかも?)
……じゃあ、山本さんで。
ヒマそうな石田さんより、”売れっ子”の山本さんに任せた方が、カッコ良く仕上げてくれそうと思えるのではないでしょうか。
忙しさは、その人・店の人気を現すバロメーター
もちろん、「ヒマそう=ウデがない」にはなりませんが、商品の購入や仕事の依頼を真剣に考えている人からすれば、相手の「忙しさ」は重要な情報になり得るのです。
言うなれば、忙しさは人・店の人気を現すバロメーターのようなもの。「信頼できそうか」「期待できそうか」を判断する基準の一つになるのです。
「人気がある/売れている/繁盛している」を演出する

「人気がある/売れている/繁盛している」をアピールする見せ方の例を、いくつか挙げてみましょう。
商品の品数を減らしておく
スーパーなどでは「特定の商品だけ品数を減らしておく」手法がよく使われます。
たとえば、似たり寄ったりの商品が並んでいるなか、ある特定の商品だけ極端に品数が少なかったら目を引きますよね。
品数が少ないと「この商品は売れているんだな」のように認識し、手に取る確率が上がるのです。
また「社会的証明の原理」といって、人は自分自身の判断より他人の判断を頼りに行動する傾向があります。

「売れているということは、選ばれるだけの理由・裏付けがあってのこと。だから、みんなが選んでいるものは良いものに違いない」と考えやすくなるのです。
また、流行に乗り遅れたくない心理「バンドワゴン効果」も働き、周囲の言動に同調することで安心感を得ようとするのです。
人は手に入れにくいものほど、価値を感じる

先述の「品数を減らす」という見せ方には、もう一つ心理効果が発動しています。「希少性の原理」といって、人は希少性が高いものに価値を感じ、惹かれる傾向があります。
たとえば、数量限定や人数限定、期間限定、資格限定などがそうです。「いつでもどこでも誰でも買えるものでない」ほど、手に入れられた時の顕示欲が満たされ、他者への優越感も得られます。
身近なものだと『プレステ5』とかそうですね。供給不足から「希少性が高い」という認識が一般的に浸透しており、転売ヤーが高額出品しても売れてしまいます。
このように、売りたい商品・サービスに魅力を感じてもらうには、希少性をアピールし、「いつでもどこでも誰にでも手に入るものではない」という印象につなげることが大切です。
駐車場に従業員の車を停めておく

お店の駐車場に車が1台も停まっていないと、「ここ人気ないのかな?」という先入観から入りにくかったりしますよね。
そこで従業員の車を停めておいて「ガラ空きの状態にしない」だけでも、一定の客寄せが期待できます。
古典的な演出ですが、わりと効果的です。
ブログやSNSでアピール

お客さまが入っているタイミングで写真・動画を撮り、「本日も大盛況です」といったコメントをつけてブログやSNSで公開するのはアピール方法の定番です。
SNSを使った情報配信は手軽でコストもそれほどかかりません。顧客にフォローしてもらい、有益な情報をgive(与える)し続けることで親近感が醸成されます。
そこから割引情報や限定クーポンといった「お得な情報」をゲリラ的に打ち出すなどすれば、希少性や特別感を演出できるでしょう。
お客さまの視界に入るように、山積みの商品を置く

たとえば、旅行でお土産屋さんに立ち寄って会計する際、棚や店員さんの後ろのスペースに、配送先の地名・宛名などが書かれた商品の箱などが山積みになっていたりすることがあります。
これってたまたま置いてあったのではなく、意図的に「お客さまの視界に入る」ように置かれていたりします。
実際、商品が山積みになっていて、「東京発送用」「大阪発送用」「福岡発送用」などと伝票が見えたら、「人気あるんだな」「そんなに売れてるなら美味しいのかな?」と興味がわいてくるのではないでしょうか。
「〇〇 御一行様」の立て看板

観光地の旅館・ホテルに行くと、入口に「歓迎 株式会社〇〇 御一行様」などと書かれた立て看板が置いてあったりしますよね。
文字どおり「歓迎の意を示す」のが目的ですが、「現在、多くのお客さまが当店をご利用しています」といった盛況さをアピールする目的も兼ねています。
こうすることで、お店の前を通りがかった観光客などに、「人気がある旅館なんだな」「次はあそこに泊まってみたい」などと思わせるイメージアップにもつながっているのです。
「忙しさの見せ方」は、ある程度パターン化されている

「忙しさの見せ方」はある程度、パターン化されているので、気をてらった演出よりもベタで予定調和といったパターンの方が受け入れられやすい傾向があります。
忙しさの演出は、扱う商品・サービスによっては非常に効果的ですが、見せ方を間違えるとうさん臭くもなり、魅力やイメージを損ねる場合があるので注意が必要です。
その商品・サービスの場合、どこまでの演出が最も想像力を掻き立て、期待値を引き上げられるか、「お客さまの視点」で考えることが大切です。
テレビショッピングは、「忙しさの演出」を学べる無料教材

「忙しさの演出」という点において、“お手本”といえるのがテレビショッピングです。
オペレーターが対応する様子を見せながら、以下のようなテロップを流すのが“お約束”ですよね。

・ただいま回線が非常に混み合っており、お電話がつながりにくくなっております。
・お電話がつながらない場合、何度かおかけ直しください。
・ただ今コールセンターでは、オペレーターを増員して対応中です。
・残り20個を切りました。お急ぎください!
・お電話が殺到しております。……あっ、たった今売れ切れたようです!

こんな怒涛の勢いで、高枝切りバサミが本当に売れてんのかい?
多くは演出ですが、注目すべきは「忙しい」が前提になっていることです。
忙しそうな様子やテロップを見せられることで「売れている」のがわかりやすく伝わり、視聴者は以下のような認識を植え付けられます。
✔ このお店は繁盛している
✔ 見てるみんなが「いいモノ」と判断したから売れている
✔ 売れているので「早い者勝ち」の状況にある

良さげな商品とは思ったけど、やっぱり他の人もそう思ってたんだ!
「在庫わずか」って言ってるし、この機会を逃したら買えなくなるかも……
先述の「社会的証明の原理」と「希少性の原理」にも当てはまりますよね。「いまを逃したら手に入らないかもしれない」という不安もあおられ、購買意欲を高められるのです。
心理効果で「プロスペクト理論」といいますが、人は「得をしたい」欲求よりも「損をしたくない」欲求の方が強いことがわかっています。
この心理を踏まえると、「こんなにお得ですよ!」と言われるより、「この値段で買えるのは今だけですよ!」と機会損失を強調された方が、人の行動エネルギーは大きくなる と考えられるのです。
ちなみにテレビショッピングで「忙しさの演出」を学ぶなら、世界最大級の通販番組『QVC』がおすすめです。
私もうっかりポチらないようにしながら勉強させてもらっています(笑)

「繁盛している」のが演出でも、「本当に忙しくなっていく」状況をもたらす場合がある

忙しそうにしている人・店は、とても魅力的に見えるものです。事実、“売れっ子“でヒマな人はいませんよね。
「人気がある/売れている/繁盛している」をアピールすると、「ウデがありそう」「信頼できそう」といったプラスの印象を与え、「あの人に頼みたい」「あの店で買いたい」といった心理につながりやすいのです。
たとえ、その「繁盛ぶり」が演出であっても、そこから「本当に忙しくなっていく」状況をもたらす場合があるのです。
本当に忙しい人が、仕事を引け受ける際にカマすべきフレーズ

最後に、日常生活やビジネスシーンででも使いやすい「忙しさの演出」を一つお伝えして、記事を終えます。
あなたは本当に忙しくてパツパツなのに、仕事を頼まれて「全然大丈夫ですよ!」と、なぜか余裕ぶっこいたことないですか?
そんな「使命感の強いタイプ」のあなたは、依頼側にとって頼れる存在であると同時に、「安請け合いの便利屋」でもあります。
ただ、自分の意志で一度でも受け入れてしまうと、なんとなく断りにくくなりますよね。これは自分の言動を一貫したものにしたいという欲求「一貫性の原理」が働くためです。
これまでは引き受けていたことを突然拒否しようとすると、「自分の言動は一貫性を欠いている」と矛盾を感じるのです。
しかし、本当に忙しくてパツパツのあなたがカマすべきフレーズは、「全然大丈夫ですよ」ではありません。
↓これです。
✔ 「本当にパツパツですが……、〇〇さんのお願いならなんとかします」
依頼を一度断る、または断ると見せかけてから、了解の意を示すのです。
↓シチュエーション的にはこんな感じ。

すみません! どうしても今週中までに欲しいと先方がゴネてまして……。なんとかお願いできないでしょうか?
(この前もやってくれたよね。できるよね。)

すみません、リソース的にパツパツで無理です。
・・・でもいつもお世話になっている森さんの頼みですから、今回だけは対応しますね。

……す、すみません。本当に助かります!!
(パツパツなのに、僕のために無理して引き受けて引き受けてくれたんだな。今後、無茶ぶりするのはやめよう。)
一度は断ります。すると相手は「ダメか……」と落胆し、欲求の出口を見失います。それから考える仕草などでタメをつくってから、「〇〇さんの頼みなので特別に」と了承するのです。
この演出のキモは“落差”にあります。断られて欲求の出口を見失った相手のテンションを一気にMIN→MAXへと引き上げられるのです。心理効果で「ハート・トゥ・ゲット・テクニック」といいます。
人は、自分の目的・要求が簡単に叶ってしまうと、達成感や有り難みが薄れます。これにはセールスにおける「勝者の呪縛」という心理効果も関係してきますが、「なんとか受け入れてもらえた」という認識を持たせるのが大切です。
要求をすんなり受け入れられた場合より大きな達成感に満たされることで、相手はあなたに深い感謝の意を示すでしょう。

また、「今回だけ」を強調すると「次はない」との牽制にもなり、無茶ぶりされる機会も減るかもです。
ただし、「上から目線」のニュアンスも出やすいので、相手の立場・信頼関係によっては使わない方が無難ですね。
【結論】人は、忙しそうな人・お店が好き

本記事のポイントのおさらいです。
✔ 人は、忙しそうな人・お店が好きで惹かれる。無意識に「あの人に頼みたい」「あのお店で買いたい」「あのお店で食べたい」といった心理が働く。
✔ 忙しさは「人気を現すバロメーター」。商品の購入や仕事の依頼を真剣に考えている人からすれば、相手の「忙しさ」は重要な情報になり、「信頼できそうか?」の判断基準になる。
✔ 「忙しさの演出」を学ぶのにオススメの教材はテレビショッピング。おすすめは『QVC』
✔ 「繁盛している」のが演出でも、そこから「本当に忙しくなっていく」状況をもたらす場合がある。
✔ 本当に忙しいあなたが、相手の要求を引け受ける際にカマすべきフレーズは、「本当にパツパツですが……、〇〇さんのお願いだからなんとかします」

ご精読ありがとうございました!
今回は、忙しそうな人・店には客が入る理由について解説してみました。
「売れっ子」の演出・アピールは、ブログ集客や仕事、日常生活でも活きるテクニックなので取り入れてみてくださいね。
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